<機関誌2004年4月号巻頭言>


アテネオリンピックを前にして



            (財)日本ハンドボール協会 副会長  市原 則之 

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 渡邊新会長体制となり早一年が経過しました。その間日本ハンドボール協会が関わる
国内外の諸事業は、大西専務理事のリーダーシップにより滞りなく執行されました。

 特に、昨年9月に神戸市で行われたアテネオリンピックアジア地区予選会は、兵庫県
ハンドボール協会の一丸となった運営で、IHF(国際ハンドボール連盟)、並びにAH
F(アジアハンドボール連盟)から高い評価を受けた素晴らしい大会でした。

 これは、1994年の広島アジア競技大会や、1997年の熊本での男子世界選手権大会等、
国内各地で開催された数々の国際大会の運営がノウハウとして蓄積され、日本ハンドボ
ール界の財産として受け継がれているものだと思います。

 しかしながら、大会運営という手段での成功も、悲願のオリンピック出場という目的
は、またしても達成することが出来ず、日本ハンドボール界のパワー不足を真摯に認め
るところです。

 8月に開催されるアテネオリンピック大会を前にして、出場できない悔しさを今一度
深く胸に刻み、神戸予選の男女ナショナルチームの感動的な健闘を無にしないよう、次
の北京オリンピック予選に繋げていかなければと決意を新たにしています。

 世界のハンドボールはここ数年急激な発展を遂げ、150 の国と地域がIHFに加盟し、
アジア地区においても今や33の国や地域に普及されています。

 アジア地区の国際競技力は、数年前までは東アジア地域が高レベルで、オリンピック
出場も韓国が一歩リードし、それを日本と中国が追うという図式でありましたが、今で
は西アジア地域や中央アジア地域のレベルが急速に上がり、オリンピック大会や世界選
手権大会のアジア予選に勝ち抜くことは至難となりました。

 幸い、昨年12月にクロアチアで行われた第16回世界女子ハンドボール選手権大会に繰
り上げ出場した全日本女子チームの活躍は、IHF役員の高い評価を受けました。

 また、松井監督率いる新生男子全日本チームは、田口前監督の遺産を引き継いで、本
年2月にカタールで行われた第19回世界男子ハンドボール世界選手権大会のアジア地区
予選を見事勝ち抜き、4大会ぶりに本大会への出場権を獲得いたしました。松井新監督
は期待通り、本人の持ち味である見事なダッシュで、幸先よいスタートを切ってくれま
した。

 こうした中、今後においても強化事業はしっかりした理念のもと、明確な活動方針を
掲げ、ナショナルトレーニングシステムを基盤に、小・中・高生の中から「第2、第3
の宮崎大輔選手」を数多く発掘し、抜本的なジュニア育成策を講じ、次々と優秀なアス
リートを世界大会に送り出していかなくてはなりません。関係者のさらなる奮起を期待
いたします。

 これらの諸事業には、多額の財源が必要です。しかし、市場経済は相変わらず企業ス
ポーツに厳しく、最早、リーグ加盟企業の脛は囓れません。現在、国やスポーツ振興基
金から戴いている補助金や助成金は、今後年々減少していくと思われます。

 ハンドボール関係者はこうした社会情勢を正しくご認識いただいて、強化事業のバッ
クアップを強く願うところです。併わせて、従来の発想の延長から脱却し、自己のマネ
ジメント能力を高め、「自立」のため各界や各セクションとの「連携」を深め、ハンド
ボール界のパワーアップにも努めていただきたいと思います。全国のハンドボール愛好
者の皆様におかれましても、よろしくご支援の程お願い申し上げます。

 また、オリンピックに賭ける少年・少女ハンドボーラーの夢の実現のため、スポーツ
振興投票くじ(toto)をご理解頂き、ご参画を併わせてお願い申し上げる次第であります。


    (財)日本ハンドボール協会機関誌「ハンドボール」2004年4月号より転載