<機関誌2007年3月号巻頭言>


日本ハンドボール協会70周年を迎えて



                 (財)日本ハンドボール協会専務理事  大西 武三 

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 本年2月2日に日本ハンドボール協会は70周年を迎えました。

 協会の設立は、1940年東京で開値される予定であったオリンピックを契機としたもので
す。日中戦争で中止となりましたが開催されていたらハンドボール界はどのようなものに
なっていたでありましょうか。ハンドボールに限らずスポーツはオリンピックとともに発
展をたどっているといっても過言ではありません。

 1936年のベルリンオリンピッックでハンドボールは初めて種目として取り入れられ華々
しく競技されましたが、その後は種目から外れ、戦後1972年ミュンヘンで男子は復活し、
女子は1976年のモントリオールで初めてのオリンピック種目となっています。戦後新しく
できた国際ハンドボール連盟には、日本はアジアでいち早く加盟しアジアのハンドボール
のパイオニア的存在でリードしてきましたが、オリンピックに対する各国の強化も著しく、
アジアNo.1 の地位を確保できないまま女子はモントリオール、男子は1988年のソウル以
後を過ごしています。学校体育教材として日本に導入されて85年、競技スポーツとして協
会を設立して70年、その間にハンドボールの発展に関わってきた多くの人たちの情熟や労
苦のうえに今があることを考え、またアジアでの誇りを取り戻すためにもそれぞれの立場
でハンドボールの発展に寄与していかなければなりません。

 日本ハンドボールの国際舞台での活躍は日本協会の使命であり、本年の北京オリンピッ
クアジア予選・愛知県豊田市の男子、カザフスタンで女子には長年の悲顧であるオリンピ
ックヘの切符の獲得の期待がかかっています。男女ナショナルチームは両監督のもと必死
で頑張っています。皆様の応援とご支援をお願いいたします。

 強化の土台となる普及も、協会としてはプロジェクト21の柱として地道に進めておりま
す。これには学校と地域の並列方式での発展が今後の課題であります。学校では、授業と
部活動のハンドボールがあります。授業では初めてスポーツに接する小学生にハンドボー
ルを経験してもらうことが何より重要です。子供にとってのハンドボールの素晴らしさは
やっていただければ分ります。楽しくスポーツの基本があります。小学校では現在の指導
要領から小学校でもハンドボールはやって良い種目としての位置づけがあり教材として取
り入れる学校も多くなっていますが、教材価値としての素晴らしさゆえに指導要領の中で
もっと明確な位置を望んでおります。小学校の授業でやる状況が整えばジュニアプロジェ
クト3000の目標である地域に子供を中心としてハンドボールチームを3000チーム作ること
はもっと実現しやすくなります。また中、高、大の学齢期の部活動チームの増大に繋がり
ます。日本協会の普及対策も都道府県・連盟に理解が深まり、小学生チームもほぼ全都道
府県で活動があり普及の機運は高まっております。また普及対策の一方の旗頭である NTS
も競技者の育成だけでなく指導者や審判の育成も含めるトータル的なシステムとして今後
ともさらに充実させていかなければなりません。

 国際舞台での選手の活躍は多くの人に感動と夢を与えてくれますが、その一方で子供が
元気よくハンドボールする姿をみるのは、実に楽しく未来・希望を感じさせます。現代で
は子供らしく活動できる環境が大変狭められており、私たち大人がハンドボールを通して
子供たちに夢を持てる場を提供していくことは強化とともにハンドボール協会の大きな使
命であります。

 「一隅を照らす」とは伝教大師・最澄の言葉であるが「一隅をまもって千里を照らすと
いう言葉があるように、一隅を確保してそれをしっかりやると全体が輝く。それぞれが与
えられたことをしっかりやって小さなこともこつこつやる。そのことが全体に反映する」。
私たちハンドボール関係者はハンドボールという一隅をもっている。その一隅にベストを
尽くし、ハンドボールが輝くようそれぞれの立場で今後とも頑張っていきましょう。


  (財)日本ハンドボール協会機関誌「ハンドボール」2007年3月号より転載