<機関誌2009年3月号巻頭言>


「ハンドボールの高まりと広がりを願って」



            (財)日本ハンドボール協会常務理事・指導普及本部長  角 紘昭 


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【楽しいハンドボールとは】

 中学校の部活動でハンドボールを経験したあるトップアスリートは「中学校時代のハン
ドボールは面白かったし、好きでした。しかし、後から考えると楽しくは無かったような
気がします。・・・・・・」と、高校時代は他の競技に進んだ理由を述べておられました。

 彼にとってハンドボールが「面白い、好き」という理由は、「仲間と共にできる、少年
期の活力を力一杯発散できる」スポーツであったからだと思います。

 では「楽しくは無かった」とは・・・

 日々の練習での達成感や先を見通した目標が持てていなかったのではないかと思います。
子どもに限らず一人の人間として自ら進んでスポーツ活動を継続していくための重要なポ
イントは、到達可能な目標をみつけることと理想とする未来像を持ち、追求できる環境が
必要であると言われています。

 ハンドボールではチームの一人ひとりが到達可能な目標と理想を持ち、仲間と共に達成
して行くところに「楽しさ」があると思います。「楽しくは無かった・・・」のはこのような
環境が整っていなかったからだとも考えられます。

 この話は、ハンドボールを普及させ、指導している関係者に貴重な示唆を与えていると
思います。チームの一人ひとりの能力や個性は様々です。「楽しい」ハンドボールにする
ためにも目標の持たせ方を、NTSの資料(DVD)、指導実践集録「ハンドボール研究」、
「エンジョイハンドボール」等々を参考にして一度振り返って考えたいものです。


【次代への希望と期待】

 今年度の JOCジュニアオリンピックカップハンドボール大会は男子沖縄県選抜チーム、
女子山口県選抜チームがそれぞれ優勝を果たし17年間に及ぶ堺市での大会が終了しました。
大会運営にご尽力いただいた大阪協会、堺市等々関係の方々にこの誌面をお借りして心か
らお礼申し上げます。

 近年、中学生の大会は小学生期に活動していた経験を基に、中学校での適切な指導の積
み重ねでレベルの高いゲームが展開されています。これらの選手たちが中学校3年間でハ
ンドボール生活を完結しないで、これを土台にさらに高い目標をもって進んでゆけるよう
に、指導者相互での確実なバトンタッチをお願いしたいと考えます。

 特に今年度優勝の男子沖縄県選抜チームは、チームのメンバー一人ひとりがハンドボー
ルに必要な基本的な技術と感覚を身につけていました。すなわち、ボールを持ったら必ず
シュートをねらう意欲と多彩なシュート技術、いろいろなパスの出来る技術、相手の意図
を先読みし反応できる能力、ボールに対する途切れない集中力、そしてこれらハンドボー
ル特有の動きになじんだ身のこなし、スタミナ等々、U−15までに身につけておく必要の
ある個人的能力が他のチームに勝っていたための優勝と考えられます。

 次のステップは、これまでの技のスピードと精度を高めると同時に更なる個のテクニッ
クとチームコンビネーションの修得であり、たくましい身体作りであります。

 この年代の選手たちが順調に成長し、オリンピックのロンドン大会、次の大会(東京大
会?)に大輪の花を咲かせるように、暖かくそして厳しく育てて行くことが必要と考えて
います。



  (財)日本ハンドボール協会機関誌「ハンドボール」2009年3月号より転載