<機関誌2010年5月号巻頭言>


「2010年競技規則改訂に期待すること」



                     (財)日本ハンドボール協会常務理事 植村 彰 


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 2009年チュニジア・チュニスガマールで開催されたIHFコーチ・レフェリーシン
ポジウムにおいて2010年8月1日より実施される競技規則改訂の説明を受け、審判部
では競技規則研究委員会・審判審査指導委員会と担当部門ごとに会議を重ね伝達への準備
を進めてきました。IHFでは2010年8月1日施行のところ、国内では新年度のスタ
ートに合わせ4月1日より改訂内容の一部について暫定的実施することを決定しました。
伝達方法は過去の競技規則改訂時の混乱を教訓とし、「正しい伝達と時期」を検討し取り
組んできました。IHFシンポジウムでは「内容の整備はあれども実施を取りやめたり遅
らせたりすることはない。必ず実施する。」とIHF/PRCのメンバーは強調していま
した。が、現在に至るまでにシンポジウムで説明された内容とは違ったいくつかの変更点
が生じています。

 3月1日、国際ハンドボール連盟(IHF)のホームページに突然、新しい競技規則と
変更点についての解説が掲載されました。定期的なIHF/PRCメンバーとのメールの
やり取りでは「5月1日に競技規則が発行される。」との情報はありましたが、ホームペ
ージヘの掲載は正直驚かされました。審判部では、競技規則研究委員会を中心にその内容
について確認を行いました。すると、昨年のIHFコーチ・レフェリーシンポジウムにお
いて「内容について変更しない」と伝達されていた改訂の中身に大きな変更がなされ、ま
た以前は含まれていなかった項目が新たに出ていることが分かりました。既に国内への伝
達として、1月に審判合同委員会(各連盟審判長。ブロック審判長の出席)を、2月には
JHLウインターカップ福井大会で全国都道府県審判長会議を開催し、競技規則改訂につ
いての伝達および説明を既に行ったところでした。IHFホームページの掲載内容に合わ
せ、審判部では新たな競技規則改訂資料を日本ハンドボール協会ホームページに掲載、各
連盟審判長・ブロック審判長からは都道府県審判長をはじめ関係者への周知徹底をお願い
したところです。当初、目指していた「正しい伝達」が今回、情報の変更が重なり一部混
乱を引き起こしてしまったことについて誌面をお借りし深くお詫び申し上げます。

 今回の競技規則改訂をIHFは当初2010年8月1日より施行するとしていましたが、
2010年7月1日に変更されています。また、新競技規則書の発行については、IHF
より5月1日に最終版が届く予定となっています。IHFホームページに掲載された競技
規則については既に競技規則研究委員会で翻訳が完了しており、最終版との照合を行った
うえ、7月1日の施行前には新競技規則書を発行出来るよう準備を進めています。

 今回のIHFが示す競技規則改訂には、ハンドボール競技の概念である相手を尊重する
こと。とくに、相手を傷つけるような行為についての罰則が明文化されています。

 また、ハンドボール競技の見所である6mと9m(フリースローラインとゴールエリア
ライン)の攻防には、2008年北京オリンピック、2009年世界選手権クロアチア大
会の分析からブロックプレーにおけるオフェンス側の許される行為と許されない行為につ
いて明確にすることにより、ハンドボール競技がさらにクリーンで発展的な競技となるこ
とを願っています。国内においても「平成22年度審判員の目標」に観客を魅了するクリ
ーンハンドボールを目指すと言う文言を入れました。

 全日本総合選手権や日本リーグプレーオフをはじめとする大会では、年々、観客動員数
が増加傾向にあり、盛況となっています。

 今回の競技規則改訂が、国内においてもさらなるハンドボール人気の上昇契機となるこ
とを願って止みません。



  (財)日本ハンドボール協会機関誌「ハンドボール」2010年5月号より転載